星乃珈琲設計コンペ

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星乃珈琲設計コンペ

主要用途:喫茶店
Principal use : Coffee shop
主要構造:鉄筋コンクリート造
Structure : RC
敷地面積:1,320.00㎡
Site area
延床面積:257.13㎡
Total floor area

担当:糸井裕構
Design term:Hironari Itoi

日曜日の昼下がり。
小学生の女の子を連れた母親が「公園かしら」とふと足を止める。
子供はすっと自然に足を踏み出し母親は止める事なく後をついていく。
すでに遊んでいた子供達とてんとう虫を追いかけて駆け出すのに時間はかからない。
微笑む母親。
その鼻頭をすーっと香ばしい薫りが通り過ぎる。
目の前の喫茶店に吸い込まれるように向かう母親に手を精一杯振る娘。
緑の丘で遊ぶ娘を眺めながら大好きなコーヒーを手に腰を下ろした。
日常の喧騒から解放され心が溶け出していく。

3ヶ月毎日通った取引先。
今日とうとう大型の契約を結ぶ事ができた。
同期からは「おまえには無理だ」と揶揄された事を思い出す。
浮かれる気持ちが抑えられないが同時に疲労が重いコートのように体を覆う。
ふと緑の丘が目に入り芝生に寝転がり空を見上げると親身にアドバイスをくれた部長の笑顔が浮かんできた。
ちょっとしたお礼がしたいな。
カフェラテが部長の大好物だ。
契約書の入ったカバンとテイクアウトのカフェラテを手に歩き出す。
羽が生えたように軽やかに。

今日は父親の55歳の誕生日だ。
大げさな事が嫌いな父。
家族でサプライズのお祝いを計画する。
特別な時間にしたい。
「最近お洒落なお店が国道沿いにできたわよ」と話す母親の顔がほころぶ。
昼は子供連れやサラリーマンで賑わうお店も夜になるとガラリと雰囲気が変わると彼氏から聞いていた。
メールで父に場所を伝え待っている間母と二人でコーヒーを注文。
廻りは恋人達が笑顔で寄り添っている。
遠くからコツコツと革靴の音。
少し早くなるのが聞こえる。